アメリカ人の物語

2017年9月17日日曜日

『アメリカ人の物語2』刊行記念勉強会案内ページ

概要


開催場所:大阪大学中之島センター6階多目的室605
※部屋の扉に「『アメリカ人の物語2』刊行記念勉強会」という貼り紙が出ます。

日時:10月15日14時~16時
※当日、私は30分前からいます。

会費:資料コピー代300円
※事前予約不要。ご購入者に限り、弊著『アメリカ人の物語』をお持ちの方はもれなくサインします。

連絡先:西川秀和(nishikawa@american-presidents.info)

内容


勉強会ではミュージカル『ハミルトン』の歌詞を読みます。英語の勉強ではなく、歌詞の背景にあるものを読み解くという趣向です。会場で歌詞をプリントアウトしたものを配ります。事前知識がなくても問題ありません。

どの歌詞を読み解きたいかリクエストがある場合は上記の連絡先までリクエストは誰でもできます。特にリクエストがない場合はこちらですべて選びます。

ペリスコープ配信


ペリスコープで同時配信します。参加者の映像・音声が入らないように配慮します。ただ参加者による質問を視聴者がわかるように私が復唱する場合があるのでその点のみご了承下さい。

ペリスコープの視聴者は、どの歌詞を読み解くかあらかじめ決めておくのでお手元に歌詞を準備したうえでご視聴ください。

質問は会場の参加者優先です。またペリスコープの仕様上、答えられるとは限りません。

2017年9月5日火曜日

アメリカの対北朝鮮政策

必要な情報が一〇〇%揃った状態で大統領が判断を下せるとは限らない。むしろそのような理想的な状態を想定することは非常に難しい。限られた情報で重大な判断を下さざるを得ないことはよくある。それは歴代大統領の誰もが経験することだ。

とはいえトランプ大統領が提示された軍事オプションがどのようなものか。前例から推察することはできる。巡航ミサイルによる威嚇的攻撃、もしくは軍事拠点に対する精密爆撃といったところが妥当ではないか。後者のほうが大規模になる。

限定的な軍事攻撃で北朝鮮体制に揺さぶりをかけて自壊を狙う。中国としては北朝鮮は残したいが、現政権は厄介払いしたいかもしれない。現体制の打倒であれば黙認する恐れもある。

ただ関係各国が必ずしも合理的な判断で動くとは限らないという問題点が常にある。だからこそ国際情勢は難しい。

第一次世界大戦が起きることを誰が予測できただろうか。そして、第一世界大戦が終わってから半世紀も経たない間にまた第二次世界大戦が起きるなどと予測できた者はほとんどいない。

2017年8月30日水曜日

北朝鮮ミサイルに関するトランプ大統領声明および安倍首相との電話会談

北朝鮮ミサイルの発射に関してホワイトハウスはトランプ大統領の声明を発表。以下、原文と翻訳。

Statement by President Donald J. Trump on North Korea
北朝鮮に関するトランプ大統領の声明

The world has received North Korea’s latest message loud and clear: this regime has signaled its contempt for its neighbors, for all members of the United Nations, and for minimum standards of acceptable international behavior.

世界は、北朝鮮体制が隣国、国連の加盟国、そして、国際的行動の受忍限度を軽視しているという高らかで明白な最新のメッセージを受け取った。

Threatening and destabilizing actions only increase the North Korean regime’s isolation in the region and among all nations of the world.  All options are on the table.

脅迫的で安定を損なう行動は、地域と世界の諸国における北朝鮮体制の孤立を助長するだけである。あらゆる選択肢を検討中である。

※私見としてアメリカは限定的軍事オプションを実施するか否か検討中なのかもしれない。ここで言う限定的軍事オプションとは、化学兵器使用疑惑に関連してシリアにトマホークを撃ち込んだように、北朝鮮にもトマホークを撃ち込むこと。軍事的には特に有効性はなくても政治的には有効性がある。ただしアメリカが限定的軍事オプションに踏み切るレッドラインはおそらく北朝鮮ミサイルが日本領土上に落下した場合かもしれないので、今回は従来通り警告だけに留まる可能性が高いと思う。今後の国連安保理の動きにもよる。国連安保理がゴーサインを出せば限定的軍事オプションを実行する可能性もあるが、現状では不透明。

ホワイトハウス、8月29日発表

北朝鮮ミサイルの発射に関してトランプ大統領は安倍首相と電話会談。ホワイトハウスは電話会談について発表。以下、翻訳と原文。

Readout of President Donald J. Trump’s Phone Call with Prime Minister Shinzo Abe of Japan
トランプ大統領と安倍首相の電話会談概要

President Donald J. Trump spoke yesterday with Prime Minister Shinzo Abe of Japan to address North Korea’s launch of a missile that overflew Japanese territory.

昨日、トランプ大統領は安倍晋三首相と日本領土上を通過した北朝鮮のミサイル発射への対応を話し合った。

The two leaders agreed that North Korea poses a grave and growing direct threat to the United States, Japan, and the Republic of Korea, as well as to countries around the world.

両首脳は、北朝鮮が合衆国、日本、そして、韓国、さらに世界中の国々に深甚で増大する一方の直接的な脅威を突き付けているという認識で一致した。

President Trump and Prime Minister Abe committed to increasing pressure on North Korea, and doing their utmost to convince the international community to do the same.

トランプ大統領と安倍首相は、北朝鮮への圧力を強め、同様に圧力を強めるように国際社会に最善を尽くして働き掛けることを約束した。

ホワイトハウス、8月29日発表

2017年8月21日月曜日

スカイラー家とハミルトン

多くの建国の父祖たちの中でもハミルトンの出自は異例である。恵まれた家庭環境にあったわけではない。身一つで新天地アメリカにやって来たと言っても過言ではない。

ミュージカル『ハミルトン』に登場する建国の父祖たちと比べるとどうか。ワシントン、ジェファソン、マディソンはいずれもヴァージニアの大農園主に属する。恵まれた出自である。ジョン・ローレンスも富裕な家に生まれ、最高の教育を受けている。フランクリンも貧賤から身を起こしたがそれでもハミルトンより恵まれていただろう。

ハミルトンが飛び込んだ新天地アメリカだが、イギリス本国よりも緩やかであったとはいえ階級がなかったわけではない。確かにアメリカにはイギリス本国からたまにやって来る本物の貴族を除けば、貴族は存在しない。しかし、実質的に貴族と言えるような名家は存在した。

ニュー・ヨークでは大土地所有者が多くの借地農を支配していた。スカイラー家もそうした支配階層に属した。

独立戦争が始まるとスカイラーは将軍の一人としてニュー・ヨークに睨みを効かしている。将軍は軍事的才能だけではなく政治的バランスも考慮して選ばれたので、スカイラー家が強い影響力を持っていたことがうかがえる。

当時の結婚は家柄が物を言ったのでハミルトンがスカイラー家と婚姻関係を結ぶのは異例のことであり、言うなれば逆玉である。確かにハミルトンは独立戦争で活躍してワシントンの信頼も厚かったが、それでもスカイラー家に釣り合う存在だったとは言えない。スカイラーがハミルトンの才能を認めたことが大きいだろう。

2017年8月19日土曜日

アメリカ大統領と休暇

基本的に国家元首である大統領には一般人のような決まった休暇はない。麻酔を使った手術をする際に一時的に権限を副大統領に移譲することがあるが、それ以外は24時間365日国家元首の職責を担う。

そもそも決められた休みがないので自分で決めて休む。

実際、休暇中でも約200人のスタッフが同行して政府機能を果たしている。核のフットボール(核の発射に必要な物が入った鞄)を持った係官も常時同行している。

大統領の休暇に随行するスタッフの人件費やエアフォースワン(飛行時間一時間当たり約2,200万円)やマリーンワンなどの運用費は政府が支払う。それは大統領が休暇中であっても公務を果たしているからである。必要な情報のブリーフィングは絶えず受けている。

ただ休暇中は公的な露出は格段に減る。メディアによる写真撮影もほとんどできない。休暇中はプライベートという意味合いが強いからだ。

大統領は休暇中でも仕事をしているので完全なオフはない。

歴代アメリカ大統領の年間平均休暇日数(小数点以下四捨五入)

オバマ 29日
ブッシュ子 110日
※2001年8月に27日間の夏休みをテキサス州の牧場で取った(911が起きる前)。ギャラップ世論調査で夏休みが長すぎるか聞いたところ、賛否はだいたい半分であった。
クリントン 22日
※例えば2000年の夏休みはヒラリーの上院選挙があったのでわずか3日間。
ブッシュ父 136日
レーガン 42日
カーター 20日

トランプはおそらく年間80日~90日程度になるか?

共和党大統領は民主党大統領よりも年間平均休暇日数が多い傾向がある。

休暇が長い大統領=仕事をさぼっているというわけではない。上記のように大統領は休暇中も仕事をしているからである。レーガン大統領時夫人は、「大統領は休暇を取るのではありません。ただ場を変えるだけです」と言っている。つまり、休暇の多い少ないはそれぞれのリーダーシップのスタイルの差である。

史上初の三期目の当選を果たしたフランクリン・ルーズベルトは、1940年12月5日~14日にかけて、カリブ海に10日間休暇に出掛けて非難された。イギリスにナチス・ドイツの脅威が迫っていたからである。実はルーズベルトは休暇中にカリブ海にあるイギリスの基地を見回ってイギリス支援策を考えていた。その後、ルーズベルトの支援策は議会の審議を経て承認された。

オバマは2016年8月6日~21日(16日間)の夏休みをマーサズ・ビンヤード島(マサチューセッツ州)で過ごした。8月中旬にルイジアナ州で洪水が起きたが、休暇を中断してすぐに被災地に行かなかったとして批判を受けた。その一方で共和党大統領候補に指名されていたトランプはオバマよりも前に被災地を回った。

2016年の夏休みでオバマはゴルフをしたり、プライベート・ビーチで楽しんだり、お気に入りの店で食事したり、サイクリングしたり、散歩したりしている。民主党の資金集めのイベントにも出ている。その他、夏に聞く曲をツイッターで公開したりしている。

アメリカ大統領と野球―始球式の起源

アメリカ大統領と野球の関係は深い。リンカン大統領は息子を連れて野球の試合を見に行っていたことで知られている。ただ南北戦争で忙しくあまり観戦はできなかったらしい。

ただ野球は大統領にとってなかなかメジャーなスポーツにならなかった。例えばセオドア・ルーズベルト大統領は野球を「意気地の無いスポーツだ」と言ってあまり高く評価していなかった。ルーズベルトが好んだのはボクシングや柔道などである。

後任者のタフト大統領は、前任者とは対照的に野球とゴルフが好きであった。タフトの考えでは、野球やゴルフは忍耐が必要な温和なスポーツで自分の性格に合っていた。

大統領の野球好きを知った球団は、野球をもっと人気のあるスポーツにするために何か良いプロモーションがないかと考えた。球団はタフトにフリーパスを渡したり、大きな身体用の特別席を準備したりして優遇した。その頃のタフトの体重は350ポンド(158.8kg)もあったからである。原因は過食。特に大統領の任期中は職務のストレスで大量に食べていた。

それを見かねた側近のアーチボルド・バットが職務から一時、離れてストレスを発散してもらうために野球観戦に誘った。そして、球団関係者のジミー・マカリアーが始球式を発案。

1910年4月14日、タフトは、ワシントン・セネターズ(現ミネソタ・ツインズ)VS フィラデルフィア・アスレチックス(現オークランド・アスレチックス)の試合を観戦した。その時、始球式が初めておこなわれた。

ただ「始球式」とは言っているものの、日本でよく見るような始球式、つまり、著名人がマウンドに立ってピッチャーに向かって投げる形式とは異なる。そもそも 1910年の「始球式」は事前に告知はなく、特別な式典ではなかった。ボールを手渡されたタフトが観客席からピッチャーに投げたところ球場が割れんばかりの喝采に包まれた。場所はワシントン D.C.のリーグ・パーク(球場名:1911 年焼失)。

タフト以後、大統領が始球式をおこなう慣習が定着した。同日の試合では副大統領のジェームズ・シャーマンも一緒に観戦していたが、ファール・ボールに当たるという椿事が起きている。

1910年6月9日の別の試合の写真

写真はLibrary of Congressが所有する「President Taft throws the first pitch, opening day at National Stadium, 1910」。撮影者はOfficial White House photographerのBarnett McFee Clinedinst Jr. (1862-1953)。

National Baseball Hall of Fame and Museumが刊行した『Inside the Baseball Hall of Fame』という本にタフトが最初の始球式で使ったボールの写真が掲載されている。箱の中にある銘板には来歴(最初の大統領による始球式で使われたなど)と書かれている。ボールには大統領のサインが入っている。これはボールを受けたピッチャーが手紙を送ってタフトにサインを求めたからと言われている。「ウォルター・ジョンソンへ、昨日の試合のようにずっとすばらしい試合を続けられるように願って」というメッセージが添えてある。

レファレンス:

John Sayle Watterson
『The Games Presidents Play: Sports and the Presidency』Johns 
Hopkins University Press (2009) 

William B. Mead and Paul Dickson
『Baseball: The Presidents' Game』
Walker Books (1997) 

George C. Rable
「Patriotism, Platitudes and Politics: Baseball and the American Presidency」
『Presidential Studies Quarterly』 Vol. 19, No. 2 (Spring 1989), pp. 363-372

2017年8月10日木曜日

記録と発掘による成果を組み合わせる重要性

アメリカ独立戦争におけるプリンストンの戦いに関する話。戦場となった一帯にリンゴ園があったという記録があり、しかもそこで戦闘が起きている。つまり、重要な場所だが、実はこれまでそこだと言われていた場所が違っていた。記録には、リンゴ園は農園の南側にあるということになっている。しかし、発掘して確かめるとリンゴ園は北側だった。もし考古学の成果がなければ、ずっとリンゴ園の位置は間違ったままだっただろう。